コラム

金融機関のマーケティングタグ実装状況(DSP・DMP等) – 証券会社編

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金融機関では、セキュリティ等の観点から「ログイン後のページ」にはデジタルマーケティングでは当然となったJavascriptタグの実装が長年に渡って普及していませんでした。

そこで今回は金融機関の中から主要な証券会社とFinTechで有名なロボアドバイザーのベンチャー企業、合計10社の「ログイン後のページ」で、どのようなタグが実装されているかを調査しました。

「金融機関におけるマーケティングタグ実装状況」の証券会社編です。

調査方法は、ブラウザのアドオンとして有名な「Ghostery」で検出されたタグ(サービス)をリストアップする、という方法です。(2017年1月26日時点)

結論から記載すると、証券会社によって方針が全く違いました。

実装タグが0個の会社から、最多は12個の会社までバラツキが出ており、
・積極的にデジタルマーケティングを推進するためにタグを実装する企業
・タグ実装は控えている企業
に二極化しています。

証券会社別のタグ実装状況

今回調査した証券会社10社のタグ実装状況は以下の通りでした。

「導入タグ数」がGhosteryで検出されたサービスのタグ数です。

証券会社別のマーケティングタグ導入数

二極化していることが分かります。

グラフにすると以下の通りです。

証券会社別のマーケティングタグ実装数(タグの目的別)

A社、F社、I社が広告用のタグを積極的に実装しています。

またJ社は分析用のタグ(アクセス解析ツール)を4種類も実装していました。

マーケティングタグの活用度合い、さらに活用の方向性が大きく異なることが伺えます。

【注意点】当調査はGhosteryで検出されたタグが対象のため、パケットキャプチャ型のアクセス解析ツールやGhosteryに登録されていないツールは調査対象外となります。また、調査対象ページは原則としてログイン直後に表示されるページです。

実装が確認されたタグ(目的別)

実装されていたタグを具体的にご紹介します。

分析(Analytics)

分析のタグ(アクセス解析ツール)は多くの証券会社で実装されており、10社中8社で確認されました。

確認された分析タグでは
・Google Analytics:4社
・Yahoo Analytics:3社
・Adobe Analytics:3社
が多い結果でした。

1社のみで見られたツールとして”Digital Forest”が検出された証券会社がありました。これは、デジタルフォレスト社が提供していたVisionalist(ビジョナリスト)です。現在はNTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションズが引き継いでいます。

タグマネージャー(Tag Manager)

タグマネージャーのタグ(表現がおかしいですが)は3社で実装が確認されました。

3社全てでGoogle Tag Managerが実装されていました。

DMP(Data Management Platform)

DMPのタグは10社中2社のみで確認されました。

確認されたDMPは
・Adobe Audience Manager
・Intimate Merger
の2つです。

流石にログイン後のオンライントレード環境にDMPを実装している企業はまだ少ない事が伺えます。

広告(Advertisement

広告のタグが実装されていた証券会社は10社中4社でした。

しかしながら、実装している企業は複数のタグを入れている場合が多く
・A社:6個
・F社:5個
・I社:5個
・J社:1個
でした。

4社全てで実装されていたのは、
・Yahoo! Retargeting
で、Yahoo!プロモーション広告のYDNによるリタゲ(サイトリターゲティング)が王道となっている事が伺えます。

その他にDSPも実装されており、
・Freak Out
・ScaleOut
・Micro Ad
・AmoAd
などが見られました。

ログイン後のオンライントレード環境にDMPやDSPのタグを実装可能か否かは「既存顧客」というセグメントを作成出来るかに直結するため、デジタル広告の効率に大きなインパクトが見込まれます。

既に口座を開設しているにも関わらず口座開設を訴求するリタゲ広告が表示されることも多く、この無駄な広告費を別の予算にする配分することが可能です。

サイト最適化(Optimisation

サイト最適化のタグは2社が利用しており
・Adobe Test&Target(Adobe Target)
・Autonomy
でした。

MA(Marketing Automation)

MA(マーケティングオートメーション)のタグも1社で実装されており、
・Marketo
でした。

この証券会社から配信されてくるメルマガはヘッダ情報を確認するとMarketo経由でしたので、MA活用が進んでいるようです。

ソーシャル(Social)

オンライントレード環境でソーシャルのタグが実装されているというのも違和感がありますが、1社で実装されていました。

・Facebook Connect
です。

実装を確認したところ、恐らくヘッダー部分で共通実装されているだけと予想されます。

今後の流れ(予想)

証券会社のログイン後のページ(≒オンライントレード環境)にJavascriptのタグを実装するかの判断ポイントは、セキュリティやJSの競合リスクだけでなく「ページの表示速度」も重要なポイントです。

1分1秒を争う取引(実際にはミリ秒、1/1000秒単位でアルゴリズムは取引をしていますが)を行うための環境でページ表示速度を低下させる可能性があるJavascriptタグを実装することは、顧客体験(CX、カスタマーエクスペリエンス)を大きく損なう危険性をはらんでいます。

ただ、将来的には、金融会社はグループ会社を横断したPrivate DMPの導入を推進すると予想しています。(銀行、証券、信託銀行、クレジットカードなど)

もちろん保有するデータの重要性から、個人情報やパーソナルデータの観点で懸念点を一つ一つ解消する必要もあるとは思われますが、やはりPrivate DMPの導入(または導入の検討)を起点にタグマネージャーやDSPへもタグ実装は広がっていくと予想しています。

次は銀行のタグ実装状況も調査してみたいと思います。(銀行と証券会社で傾向は違うのか?)

著者プロフィール
大室 州
株式会社Finsight 代表取締役
MA、アドテク、アクセス解析など、マーケティングテクノロジーとデータの活用を軸に事業企画やコンサルティング業務に従事し、2016年10月に株式会社Finsightを設立。
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